コラム 2019年

2019/12

人事・総務担当者必読!2019年から2020年にかけて、年末調整の書類はこう変わります

年末調整の時期も近づいてきたけど……

ハロウィンが終わり、街中の飾りがクリスマス一色になってくる頃には、人事・総務の担当者の人にとっての一大イベントが待ち構えています。それが、年末調整です。
会社勤めの人(給与所得者)の給与やボーナス(賞与)については、あらかじめ所得税を差し引かれた(源泉徴収された)形で、受け取ります。しかし、「生命保険をかけている」「住宅ローンを払った」「子どもが多いので生活費がかかる」などの理由で、実際に支払うべき税金より多く差し引いていたことも考えられるのです。そのため、必要な書類を提出してもらった上で本来支払うべき税金を計算し、差額を払い戻す(還付する)仕組みとして、年末調整が取り入れられています。
今回は、年末調整の書類についての変更点をいくつか解説しましょう。

2019年の年末調整の書類に関する変更点

2019年の年末調整の書類に関する変更点として、1)元号表記の変更、2)住宅ローン控除申告書の記載事項変更、の2点を抑えておきましょう。
まず、1)についてですが、2019年5月1日に皇位継承が行われたことにより、平成から令和へ元号が変わりました。そのため、総務省が公表している控除申告書や給与支払報告書の様式においても、元号は令和に改められています。しかし、扶養控除等(異動)申告書では、2019年5月1日以降を表す元号として「平成」が使われているのです。これは、扶養控除等(異動)申告書がその年の最初の給料を受け取るまでに提出する書類であることが関係しています。なお、西暦も併記されているので、無理に元号を令和に直す必要はありません。

次に、2)は、住宅ローン控除を受ける人が勤務先に提出する「(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書」についての変更です。平成31年(2019年)4月1日以降に提出される申告書では、以下の項目については提出者が記載する必要がなくなりました。

・ 住宅の取得年月日・居住開始年月日
・ 取得対価・費用の額
・ 床面積(特定増改築等住宅借入金等特別控除を受けている場合)
・ 2%の控除率の対象となる工事費用の額

記載をしない代わりに、企業側の人事・総務担当者は、税務署から発行された控除証明書に記載された金額を確認し、手続きを進めることになります。

2020年の扶養控除等(異動)申告書の変更点

また、2019年分の年末調整を行う際に、ついでに2020年分の扶養控除等(異動)申告書の提出を求める場合もあるでしょう。関連する知識として、1)各種控除における所得の見積額の条件、2)単身児童扶養者の記載事項追加、の2つの変更点についても押さえておきましょう。

1)についてですが、扶養控除等(異動)申告書で申告する各種の控除について、所得の条件に関する金額が、2020年から以下の通り変更されます。

・ 源泉控除対象配偶者に関する控除:95万円以下(改正前:85万円以下)
・ 扶養控除/寡婦(寡夫)控除:48万円以下(改正前:38万円以下)
・ 勤労学生控除:75万円以下(改正前:65万円)

2)についてですが、扶養控除等(異動)申告書から、住民税に関する事項として「単身児童扶養者」欄が追加されました。つまり、申告書の提出者が単身児童扶養者であった場合は、児童扶養手当の証書番号や同一生計内すべての児童の氏名・所得見積額を記載しなくてはいけません。なお、単身児童扶養者とは、児童扶養手当を受けている未婚のひとり親(シングルマザー・ファーザー)で、対象児童の総所得金額等が48万円以下の人を指します。

まとめ

年末調整に関連する書類の変更点として、主要なものを紹介しました。元号は比較的わかりやすいはずですが、それ以外はわかりにくいかもしれないので、事前にしっかり確認しておきましょう。     

2019/11

マイホームを買った人必見!住宅ローン控除を受けるには?

「実は今年、マイホームを買った」という人は、あなたの周りにいませんか?もしくはあなた自身がそうかもしれなかったら、住宅ローン控除が受けられるかどうか、確認しましょう。
状況次第では、支払うべき税金をかなり安くできるかもしれません。そこで今回は、住宅ローン控除(減税)について説明します。

1.住宅ローン控除(減税)とは?

最初に、住宅ローンがそもそも何かについて説明しましょう。

1-1.住宅ローン控除の概要

住宅ローン控除(減税)を簡単に言うと、「マイホームを買うために住宅ローンを組んだ場合、一定の割合に相当する金額が所得税から控除される(=差し引かれる)制度」のことです。マイホームを買おうとする人の経済的な負担を和らげる効果があります。


2.住宅ローン控除を受けられるのはどんな時?

それでは、どんな時に住宅ローン減税を受けられるのでしょうか?

・ 建物に関する条件
・ ローンの種類に関する条件

から考えてみましょう。

2-1.建物に関する条件

まず、大前提として理解してほしいのが、「住宅ローン控除は、実際に住む家を手に入れるのが前提の制度である」という点です。詳しくは後述しますが、「完成したら6か月以内に住み始めなければいけない」など、適用を受けられる条件が細かく決まっています。
これから家を建てる、という人は、引っ越しのスケジュールもそれに合わせて決めなければいけないので、しっかりチェックしましょう。

2-2.新築の場合

以下の条件を満たす必要があります。

・ 新築もしくは取得日から6か月以内に入居している
・ 借り入れした人の合計所得金額が3000万円以下である
・ ローンの返済期間が10年以上
・ 登記簿に記載されている床面積が50平米以上である
・ 床面積の1/2以上が自分の居住用である

最後の床面積については、「経営者、フリーランスなので、仕事場兼自宅を建てる」という場合に、特に注意しましょう。

2-3.中古の場合

新築の場合の条件に加え、以下の条件を満たす必要があります。

・ マンションなどの耐火建築物は、取得の時点で築25年以内である
・ 耐火建築物以外は取得の時点で築20年以内であるもしくは一定の耐震基準をクリアしている
・ 生計を一にする親族などからの購入ではない
・ 贈与された住宅ではない

2-4.増築・リフォームの場合
新しく家を買うのではなく、増築・リフォームをするためにローンを組む場合も、住宅ローン控除は使えます。ただし、新築住宅の時の条件に加えて、以下の条件を満たすことが必要です。

・ 自分で所有かつ居住する住宅について行う
・ 一定の条件を満たす省エネ・バリアフリー・耐震リフォームもしくは大規模な間取り変更・修繕である
・ 工事費用が100万円超
・ 店舗併用住宅等の場合、居住用部分のリフォーム費用が1/2以上

3.住宅ローン減税を受けるための手続きは?

条件を満たす場合であっても、実際に住宅ローン控除を受けるためには、確定申告を行わなくてはいけません。入居した年の翌年1月1日から手続きができるので、早めに済ませましょう。その際に必要になる書類は、以下の通りです。

3-1.必要書類リスト
以下のものを過不足なくそろえましょう。・ 確定申告書A(第一表と第二表)や(特定増改築等)住宅借入金等特別控除額の計算明細書については、最寄りの税務署の窓口に行けばもらえます。もちろん、国税庁のホームページからダウンロードも可能です。

・ 確定申告書A(第一表と第二表)
・ (特定増改築等)住宅借入金等特別控除額の計算明細書
・ 勤務先の源泉徴収票
・ 金融機関等からの住宅ローンの借入金残高証明書
・ 土地・建物の登記簿謄本
・ 売買契約書または建築請負契約書のコピー
・ マイナンバーの本人確認書類
・ その他、認定長期優良住宅の特例などを利用する場合の書類のコピー

なお、確定申告自体は郵送でも受け付けてくれるので、時間がない人は活用しましょう。     

2019/10

小規模宅地等の特例とは?知っておきたいポイントを解説します

小規模宅地等の特例とは?

小規模宅地等の特例とは、簡単に言うと、「一定の条件を当てはまる土地について、相続税評価額を最大80%減額できる制度」のことです。この制度を使えば、相続税を大幅に減額できる可能性があるので、「実家の土地を相続する予定で……」という人は、必ずチェックしておきましょう。

小規模宅地の特例の対象になるのはどんな土地?

もちろん、どんな土地でもこの制度の適用を受けられるわけではありません、次の3つが、この特例の適用を受けられます。

 特定居住用宅地等:住宅として使われていた土地を指します。「実家の親が住んでいた家と土地」はこれにあたると考えましょう。
 特定事業用宅地等:事業を営むために使われていた土地のことです。「実家の親が営んでいた八百屋の建物」はこれにあたります。
 貸付事業用宅地等:第三者に貸したり、その上に賃貸アパートを建てていたなど、貸付を目的として使われていた土地です。「実は実家がアパートを貸していた」などは、これにあたります。

特例の適用を受けるための条件は?

もちろん、特例の対象となる土地であっても、実際に制度の適用を受けるためには、さらに細かい条件があります。それぞれの種類について、条件を説明しましょう。

特定居住用宅地等の場合

故人=亡くなった人や生計を一にしていた親族=一緒に生活していた親族が住んでいた土地を、配偶者が相続する場合は、この特例の適用が受けられます。また、同居していた親族や、生計を一にしていた親族が土地を相続し、そこに住み続ける場合も大丈夫です。なお、相続税の評価額について、この特例の適用を受けられる限度面積は330㎡までで、減額率は80%です。

特定事業用宅地等の場合

相続開始3年前よりも以前からその土地で事業を営んでいて、相続人が相続税の申告期限まで事業を継続していることが必要です。つまり、「亡くなった人がやっていた商売を続けることが条件」と考えましょう。なお、相続税の評価額について、この特例の適用を受けられる限度面積は、400㎡までで、減額率は80%までです。

貸付事業用宅地等の場合

相続開始前からその土地で不動産貸付業を営んでいて、相続人が相続税の申告期限まで不動産貸付業を継続していれば、適用を受けられます。簡単に言うと、「亡くなった後も、アパート経営などを続ける」と考えましょう。なお、相続税の評価額について、この特例の適用を受けられる限度面積は、200㎡までで、減額率は50%までです。

小規模宅地等の特例の注意点

最後に、小規模宅地等の特例について、注意点を2つ紹介しましょう。既に触れた通り、この制度は、「個人が住んでいた、使っていた土地に住み続ける、使い続ける」ことが前提の制度です。仮に、亡くなった人=故人が老人ホームに入居していた場合は、従来はこの制度の適用が受けられませんでした。しかし、平成25年の税制改正により、一定の要件を満たせば、特例の適用を受けられるように変更されています。また、相続時精算課税制度を利用して土地の贈与をしていた場合、小規模宅地等の特例の適用は受けられません。相続時精算課税制度を使う場合は、この点にも注意して検討しましょう。

2019/09

2019年10月からついに消費税率が10%に!史上初の2つの取り組みを紹介します

8%から10%の裏には……

これを読んでいる方の多くがご存知のように、2019年10月1日から消費税の税率が、8%から10%にアップします。消費税が導入された当初の税率が3%だったことを考えると、10%はやはり高い税率に感じるかもしれません。詳しくは後述しますが、消費への影響も懸念されています。
また、今回の消費税率の引き上げにあたり、日本ではこれまで実施してこなかった以下の2つの取り組みが導入されます。

・ 軽減税率の導入 
・ キャッシュレス・消費者還元事業

今回は、この2つの取り組みについて、改めておさらいしましょう。

軽減税率とは?

簡単に言うと、食料品など、一定の条件にあてはまる生活必需品に対しては、通常の税率より低い税率を適用することです。低所得者への配慮として、フランス・イギリスなど、世界の一部の国で導入されています。

なお、日本の場合は、

・ 飲食料品
・ 週2回以上発行されている新聞

については、税率が8%のままになるということです。

ここで、わかりづらいケースを2つほど紹介しましょう。

1)ノンアルコールビールと普通のビール

ノンアルコールビールは、アルコール分1%未満であるため、「飲食料品」として扱われます。なので、軽減税率の対象です。一方、普通のビールは「酒類」として扱われるため、軽減税率の対象とはなりません。

2)新聞の電子版

週2回以上発行されている新聞であっても、紙・電子版のどちらを選ぶかで、適用される税率は変わります。今回の軽減税率で想定している新聞は、紙で発行されているものであるため、電子版の場合は、軽減税率の対象とはなりません。つまり、同じ新聞を読むのに、紙・電子版のどちらを選ぶかで、支払う消費税額も違ってくるのです。
 
このように、一見、同じように見える取引であっても、適用される税率が違ってくるのが、軽減税率においては大きなポイントになります。軽減税率の対象となる品目を扱う事業を行っている事業主の方は、レジシステムの見直し、従業員への教育等も含め、必要な対応の進捗を今一度確認しましょう。

キャッシュレス・消費者還元事業

もう1つの施策として注目されているのが、キャッシュレス・消費者還元事業です。

簡単に言うと、

・ 所定の条件を満たす中小・小規模事業者が営む店舗で
・ クレジットカード、電子マネー、バーコード決済等の決済手段で買い物をすると
・ 購入額の5%もしくは2%がポイント還元される

という事業です。

キャッシュレス・消費者還元事業を行うに至った理由の1つとして、2014年4月に行った消費税率の引き上げが挙げられます。増税前は、いわゆる「駆け込み需要」で、高額のものを買い求める人も多く、景気は一時的に上向きました。しかし、増税後は一転して買い控えが起こってしまい、景気の後退につながったのです。今回の増税で、さらに消費税率があがることから、景気の後退を懸念する声が政財界からも多く上がりました。そこで、景気平準化対策の一環として、キャッシュレス・消費者還元事業の実施が決まったのです。
既にコンビニエンスストア・クレジットカード会社など、関連する企業がこの施策への取り組みの方針を発表しています。全く初めての施策であるため、景気平準化において、どれだけ効果があるのかはわかりません。それだけに、今後の展開を注意深く見守っていく必要があるでしょう。
     

 2019/08

海外出向者の所得税の非居住者の所得税の取扱

海外にいたら、日本の税金はどうなるの?

・ 海外に転勤になった
・ 転勤ではないが、1年近い長期出張が入った

などの理由で、生活の拠点を海外に移すことがあるかもしれません。そうした場合、日本の税金はどうなるのでしょうか?

ここでは、

・ 所得税
・ 固定資産税
・ 住民税

の3つの税金について、考えてみましょう。

所得税は1年がボーダーライン

所得税を払うかどうかの判定にあたって重要になるのが、「居住者」「非居住者」という考えです。日本国籍を持っている人でも、「どこに住所があるか」で、

居住者:日本国内に住所を有している(住んでいる)、もしくは海外への滞在期間が1年未満である。
非居住者:日本国内に住所を有していない(海外への滞在期間が1年以上である)。

のいずれかに分けられます。

そして、会社からの給料などの収入を、どこで受け取ったかも、判定を左右します。「どこで受け取ったか」で、

国内源泉所得:日本国内において受け取った不動産収入、給料、利子など
国外源泉所得:海外において受け取った不動産収入、給料、利子など

に分けられるのです。
ここまでの話を踏まえ、結論を出しましょう。

・ 居住者であれば、国内・国外源泉所得ともに課税の対象となる。
・ 非居住者であれば、国内源泉所得のみ課税の対象となる。

です。なお、非居住者であっても、国内源泉所得が年間20万円以上ある場合は、確定申告・納税が必須です。

固定資産税・住民税は?

次に、固定資産税と住民税についても考えてみましょう。まず、固定資産税は、「その建物、土地を所有している人」に対するものなので、どこにいても払う必要があります。
一方、住民税は、「前年の所得に基づいて、1月1日に日本に住所を有していた人」に課税されるものです。その年の6月から、翌年の5月まで、毎月支払います。例えば、2019年1月1日に出国したら、2020年5月までは住民税を払い続けないといけないのです。
出国のタイミングは自分だけでは決められない部分もありますが、住民税の負担も考えて、スケジュールを組みましょう。

なお、海外にいても確定申告・納税をしなくてはいけない場合は多々あります。
自分の代わりに納税をしてくれる人=納税管理人を立てると、楽に進められるので、親族に頼むか、もしくは税理士に相談しましょう。


2019/07

実は給料の一部!?社員に商品券を贈呈するときの注意点

「ありがとう」の意味であげるのはいいのですが……

社員として長年勤めてくれている、目覚ましい成績を出した、などの理由で、社員に商品券を贈呈する企業は多いでしょう。
「ありがとう」の気持ちを伝える、という大事な意義がありますが、正しい経理処理はできているでしょうか?
実は、「何を」「どういう目的で」贈呈するかにとって、経理処理が全く異なるのです。
正しい経理処理を行って、気持ちよく受け取ってもらえるようにしましょう。

ケース1.永年勤続者に旅行ギフト券を贈呈する場合

長年勤務してくれている社員に対する表彰が目的の場合、どんな商品券を贈呈するかによって、扱いが異なります。
 まず、商品券が「旅行会社で使える旅行ギフト券」だった場合、実態は「旅行をプレゼントすること」に近いです。
そのため、以下に挙げる条件に当てはまれば、贈呈した旅行ギフト券の相当額を福利厚生費として経理処理できます。

1)旅行の実施時期
旅行ギフト券を受け取ってから概ね1年以内

2)事務処理上の注意
宿泊したホテルの領収書など、旅行に行った事実が確認できる書類が揃っていること。

旅行ギフト券も金券の一種である以上、金券ショップなどに持ち込めば、現金化が容易にできてしまいます。
そのため、福利厚生費として処理するためには、金銭性を弱くすること、つまり、「その旅行ギフト券を使って実際に旅行に行った」という事実をそろえるのが大事です。

参照 http://www.soumu.go.jp/main_content/000466342.pdf


ケース2. 表彰、永年勤続への感謝として全国共通商品券を贈呈する場合

一方、優秀な業績を修めた社員への表彰や、永年勤続への感謝が目的で、全国共通商品券を贈呈する場合は、事情がやや異なります。
ここでいう全国共通商品券とは、「デパートで使える全国百貨店共通商品券」「クレジットカード会社が発行するギフトカード」等を想定してください。
これらの全国共通商品券は、「受け取った側は、商品を自分で自由に選んで購入できる」ため、会社から金銭を交付したのと実態は変わりません。
そのため、金額および理由の如何を問わず、社員に対する給与として経理処理する必要があります。
複利厚生費として処理してしまいがちな項目でもあるので、気を付けましょう。
なお、「創業〇周年」などの区切りに、社員に対して記念品等を配布することもあるはずです。
その際、記念品として全国共通商品券を配布した場合も、給与として課税されるので、注意してください。

参照 https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/gensen/03/42.htm

     

     

2019/06     

案外知らない!?消費税の基礎知識

レシートには書かれているけど……

買い物をしたり、ご飯を食べたりした際のレシートには、必ずと言っていいほど書かれている消費税。「何か を買ったらかかるのだな」というイメージは、多くの方がお持ちのはずですが、どんな税金なのか、正確に説明できますか?なじみがある割には、意外と説明しにくいかもしれません。
そもそも消費税は、事業者が物品・サービス等を提供する際、その価格に上乗せする形で課される税金のことです。根拠となる法律である消費税法は、1989(平成元)年4月1日から適用が開始されました。
先ほど、レシートの話に振れましたが、消費税を納めるのは、あくまで消費者=お金を出した人です。お店=事業者は、消費者から預かった消費税を国に代わって納める仕組みになっています。消費税は、このような「税金を支払う人と納める人が異なる」税金(間接税)であることも大きな特徴の一つです。
2019年6月現在、消費税は8%ですが、「どこに収めるか」によっても、さらに細かく分けられます。国に納める部分=国税の税率は6.3%、都道府県などの地方自治体に納める部分=地方消費税の税率は1.7%です。


実は何にでも消費税がかかるわけじゃない

消費税は一見、日々の暮らしの様々な場面で負担するためか、「何にでもかかる」と思ってしまいがちです。しかし、実際は消費税がかかる取引は、一定の要件を満たすものか、保税地域から引き取られる外国貨物(輸入取引)だけです。
一定の要件とは、1)国内において行う、2)事業者が事業として行う、3)対価を得て行う、4)資産の譲渡、資産の貸し付け、役務の提供であるの4つを指しています。
つまり、「日本国内で、個人事業者や法人が、お金などの対価を得て行う、商品・サービスの提供や、不動産・お金の貸し付け」などに、消費税がかかるのです。
ちなみに、この条件を満たしていても、「消費に対して税金を支払ってもらう」という性格になじまないものや、社会政策的な配慮から、消費税がかからない取引もあります。そのような取引を非課税取引と言い、土地の譲渡及び貸付け、有価証券等の譲渡、介護保険サービスの提供などが当てはまるのです。詳しくは国税庁のホームページにも書いてありますので、ご興味がある方は一度お読みください。

参照 国税庁「タックスアンサー No.6201 非課税となる取引」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6201.htm
     

2019/05

領収書は捨てないで!医療費控除の受け方、教えます

花粉症、お子さんの風邪、コンタクトの定期健診……実は思った以上に医療費って、ちょこちょこと出ていくものです。「健康そのもので医者にかかったことがない!」という方はともかく、それなりに医療費がかかるなら、医療費控除をぜひ受けましょう。


医療費控除とは

一定の条件に当てはまる医療費を、一定額以上支払った場合に受けることができる所得控除を指します。つまり、税金の計算をする際に、基準となる1年間の収入=所得から差し引くことができるため、結果として税金が安くなるのです。

ここで、一定額と書きましたが、計算式を説明しましょう。
「医療費控除の対象=実際に支払った医療費の合計額ー保険金などで補填される金額ー(10万円またはその年の総所得金額が200万円未満の場合は総所得金額の5%にあたる金額)」です。なお、「保険金などで補填される金額」には、生命保険の入院給付金、高額療養費、出産育児一時金など、払い戻しや支給を受けた金額と考えてください。

また、医療費控除を受けるためには、還付申告を行う必要があります。この際に医療機関の領収書が必要となるので、必ずとっておきましょう。実際には、医療機関の領収書と確定申告書、源泉徴収票を用意し、翌年の1月1日から5年間の間に、還付申告を行います。

ちなみに、医療費控除を受ける際には、「自分の医療費」だけでなく、「生計を共にする家族の医療費」も含めることが可能です。つまり、配偶者、子、両親、祖父母の医療費も、「自分が生活費を出している」なら、合計することができます。しかし、たとえ一緒に住んでいても、「夫婦共働き」「すでに社会人として独立している」など、生計を独自に立てているなら、合計できません。

医療費控除の間違いポイント2つ

ここで、医療費控除について、間違いやすいポイントについて説明しましょう。

まず、医療費控除を受けるにあたっては、「いつ、その医療費を支払ったか」が重要になります。つまり、2019年度の医療費控除を受けようとする場合は、2019年度のうちに実際に支払ったものだけになるので、注意してください。2019年度に治療は受けたけど、支払が2020年度になるというケースの場合はNGです。

また、どこまでを医療費として扱うのかが問題となります。詳しい分類は国税庁のホームページにも書いてあるのですが、ポイントは「治療に当たるものかどうか」です。

参照 No.1122 医療費控除の対象となる医療費
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1122.htm


例えば、人間ドックを受けても、異常所見が見つからなかった場合は、「治療」ではなく「予防」にあたるものとして、検査費用は医療費控除の対象外になります。しかし、異常所見が見つかり、医師の治療が必要となった場合は、「治療」に当たるため、含むことができるのです。なお、出産の場合は、妊婦検診費用・通院費用を医療費として扱うことができます。
「出産は病気ではない」とされ、妊婦検診費用が保険外診療とされているため誤解されがちですので、覚えておくといいでしょう。    

2019/04   

ふるさと納税のメリット・デメリット

特定の自治体に寄附をすると、返礼品がもらえ、しかも、確定申告・ワンストップ特例制度を使えば、税金の控除も受けられるーこれが、ふるさと納税制度です。
一見、いいことづくめの方に思えますが、実はデメリットもあることを覚えておきましょう。

ふるさと納税のメリット

まず、利用者側にとってのわかりやすいメリットとしては、「質の高い返礼品が手に入る」点が挙げられます。地域によって品物は様々ですが、食品(肉、魚、米、お酒)、生活必需品(ティッシュペーパー、洗剤)、旅行券(地元の有名旅館の宿泊券)など、種類も様々です。最近では、「お墓の掃除の代行」など、ユニークな返礼品も出てきました。

また、簡単な手続きで地方自治体への寄附ができるのもメリットでしょう。「ふるさとチョイス」などのポータルサイトから、ネットショッピングをする感覚で済ませられます。

このような簡単な手続きを導入しているため、ふるさと納税を行っている自治体側にとっても、税収が見込めるのです。さらに、地域ならではの特色を打ち出した返礼品を導入すれば、地域のPRにもつながります。

ふるさと納税のデメリット

デメリットについても考えてみましょう。まず、利用者側にとってのデメリットは、「どうすれば所得税・住民税の控除が受けられるかわからないことです。確定申告やワンストップ特例制度を利用すれば受けられるのですが、慣れていない人にとっては、その手続きすらもおっくうに感じられるでしょう。また、先に寄附をするのが前提となるため、一時的に金銭的な負担をしなくてはいけません。

一方、自治体側のデメリットとしては、「返礼品次第で税収が左右される」ことです。つまり、地域の特産品など、魅力がある返礼品を用意できる自治体なら、税収のアップが見込めますが、逆もあり得ます。

代表的なのが、東京都世田谷区です。報道によれば、平成29年度中のふるさと納税に伴う同区の減収額は41億円にも上りました。これは東京23区では最大の規模とのことです。

もちろん、国もこの状況を看過しているわけではありません。総務省は2019年度の税法改正案に、「返礼品額の比率を寄附額の3割までとする」「地場商品以外を返礼品としない」などの規制を盛り込んでいます。この規制が地域間格差の是正につながるか、注意深く見守っていく必要がありそうです。     

2019/03

「税制改正」
経営者注目!中小企業にやさしい税制の話

中小企業は依然厳しい状況

日本の経済は、緩やかながら回復傾向にあるといわれています。
一つの指標として、年間の日経平均株価を見てみましょう。
リーマンショックが起こった2008年の年間日経平均株価(終値)は8,859円56銭でした。
一方、2018年は20,014円77銭と、バブル期には遠く及びませんが、確かに上昇しています。

参照 日経平均プロフィル
https://indexes.nikkei.co.jp/nkave


それでも、中小企業にとっては、安泰とはいいがたい状況であるのは間違いありません。
東京商工リサーチの調査によれば、2018年(平成30年)の全国企業倒産件数は8,235件。
つまり、1年間で8,000社以上の会社が「つぶれている」わけです。

参照 2018年(平成30年)の全国企業倒産8,235件
http://www.tsr-net.co.jp/news/status/yearly/2018_2nd.html


中小企業者等に対する軽減税率の延長とは?

中小企業を取り巻く環境が厳しい現状は、税制にも反映されています。以前より適用されてきた「中小企業者等に対する軽減税率」が、さらに延長される運びとなったのです。ポイントをわかりやすくまとめました。

・ 中小企業者等の年所得800万円以下の部分に、法人税の軽減税率(15%)が適用される。
*本則税率は19%。
・ 当初は「2019年3月31日までに開始する事業年度」までの適用だった。
・ 「2021年3月31日までに開始する事業年度」までに延長された。

4%軽減されると、実際に支払う税金はだいぶ違うのはお分かりいただけるはずです。


ここで「中小法人って何?」という疑問がわくかもしれません。
中小法人とは、「期末資本金の額が1億円以下の普通法人」を指しています。
つまり、資本金が1億円以下なら、この軽減措置の適用を受けられると考えていいでしょう。

中小企業投資促進税制とは?

また、「新しい機械を導入したい」「パソコンのソフトをバージョンアップしたい」など、生産性を向上させるための取り組みを行う場合もあるでしょう。このように、多額の費用を支出が伴う場合は、税制上の優遇が受けられます。

中小企業投資促進税制と言って、一定の条件にあてはまる設備を取得・製作した場合に、取得価額の30%の特別償却又は7%の税額控除が選択適用できる制度です。1台160万円以上の機械装置、合計70万円以上のソフトウェアなどが対象となります。なお、この税制も、本来は「2019年3月31日までに開始する事業年度」までの適用でしたが、「2021年3月31日までに開始する事業年度」に後ろ倒しになりました。

これらの税制も上手に使い、生産性を高めつつ、働きやすい職場を実現するのが、経営を長続きさせるコツの一つでしょう。
もし、ご自身の会社がこれらの優遇措置を受けられるかどうか知りたい場合は、税理士等の専門家にご相談ください。

2019/02
自宅で24時間確定申告ができる!e-taxとは?

締め切り直前の税務署は……

確定申告を1度でも経験したならわかるかもしれませんが、期限直前の税務署は、大変混みあいます。確定申告をするだけで、一日つぶれてしまうのも珍しくありません。さらに、忙しく働いている方だったら、税務署に行く時間すら確保できないこともあり得るでしょう。「税務署に行かなくていい方法があれば……」と思うあなたに教えたいのが、e-Taxです。


e-Taxって何?メリット教えます

簡単にまとめると、「自宅などのパソコンから、確定申告をはじめとする申告・申請・届出・納税の手続きが行えるサービス」のことです。正式名称は「国税電子申告・納税システム」といい、2004年から開始されています。

メリットは、1)24時間手続きができる、2)書類の添付がいらない、3)計算ミスが起こらない、4)還付されるまでが速い、です。

1)についてですが、確定申告の期間中は、24時間e-Taxのシステムを使うことができます(ただし、メンテナンス期間を除く)。

2)についてですが、源泉徴収票や医療費控除に使う領収書などの書類は、必要事項を入力すれば、書類そのものを提出しなくていいということです。ただし、書類自体は5年間保存しておく必要があるので、気を付けましょう。また、すべての書類を添付しなくてはいいわけではないこともご注意ください。

3)についてですが、e-Taxに必要事項を入力すれば、税額を自動的に計算してくれるので、ミスがありません。必要事項を入力し忘れても、エラーが出るので気づけます。

4)についてですが、実際は申告した時期によってばらつきがあるものの、3~4週間程度で還付が受けられるケースが多いです。


e-Taxのやり方って?

e-Taxを使う際の一般的な流れを説明します

最初に、所轄の税務署(お住まいの近くの場合が多いです)に電子申告開始届出書を提出します。国税庁の公式ホームページからオンラインで手続きをするのも可能です。

なお、e-Taxを利用する場合、電子証明書が必要になります。これは「自分が書類を作成しました」という事実を証明するために使うものと考えてください。個人の方がe-Taxを利用する場合、電子証明書としてマイナンバーカードを使うのが一般的です。

手続きが完了すると、利用者識別番号等、必要事項が通知(オンライン発行、後日郵送)されます。これらの事前準備を済ませたら、国税庁ホームページの「確定申告書等作成コーナー」で書類を作成し、e-Taxにログインして、データを送信する流れです。添付書類のうち、提出が求められるものは、別途税務署に郵送してください。そして、納税すべき金額を、預貯金口座からの振り替え・インターネットバンキングなどで納税しましょう。最後に、納税証明書の交付手続を行えば、一連の手続きは完了です。     

2019/01

確定申告をしなかった人の末路


そもそも確定申告って何?

確定申告とは、毎年1月1日から12月31日までの1年間の所得を計算し、それに対する税額を算出して、翌年の2月16日から3月15日までの間に申告・納税をすることです。
次に紹介する一定の条件に当てはまる人は必ず確定申告をしないといけません。
・ 年間の給与収入が2,000万円以上
・ 会社勤めをしているけど、副業での収入(株、FX、不動産投資も含む)の合計額が20万円を超えている
・ 公的年金、個人年金の雑所得を一定額以上受給している
・ 災害減免法により、税金の軽減措置が受けられる
・ 勤め先で年末調整をしていない 等
また、会社勤めをしていて、給料から税金が天引きされている(源泉徴収)場合は、確定申告は必須ではありません。しかし、医療費控除や住宅ローン控除を受ける場合、年末調整では対応できないので、確定申告を行う必要があります。

確定申告をしなかった人の末路

ところで、確定申告には「毎年3月15日まで」という厳密な期限が設けられています。
間に合わなかった、わざとしなかったなど、理由は様々ですが、仮に本来確定申告をすべき人が、期限内に確定申告をしなかった場合、何が起こるのでしょうか?ここでは、確定申告をしなかった場合に受けるペナルティについてまとめます。

1)無申告加算税
理由は何であれ、期限通りに確定申告書を提出しなかった場合、無申告加算税が発生します。
手続きが済んでいないことに対するペナルティです。原則として、納税すべき税額が50万円までの場合は15%、50万円を超える部分については20%を乗じた金額が、無申告加算税として追加で支払うべき金額となります。なお、税務署の指摘を受ける前に、自分から期限に遅れても申告をした場合は、無申告加算税の減額が受けられることも覚えておきましょう。

2)延滞税
一方、期限通りに税金を納めていないことについても、ペナルティが課せられます。延滞税と言って、法律で決められた納付期限の翌日から実際に納付した日までの日数に応じ、利息に相当する金額を払わなくてはいけません。

なお、延滞税税率ですが、2019年1月1日から12月31日の場合は、
・ 納期限までの期間及び納期限の翌日から2月を経過するまでの期間:2.6%
・ 納期限の翌日から2月を経過する日の翌日以降:8.9%
に設定されています。

3)ほ脱
わかりやすく言うと、「脱税容疑で逮捕される」ことです。所得税法第238条1項には、このような規定があります。

「偽りその他不正の行為により、第120条第1項第3号(確定所得申告に係る所得税額)に規定する所得税の額・・・につき所得税を免れ、又は・・・所得税の還付を受けた者は、10年以下の懲役若しくは 1000万円以下の罰金に処し、又はこれらを併科する。」

つまり、故意に確定申告を行っていない、過少申告をしたとみなされた場合は、脱税の容疑をかけられてもおかしくありません。

ここまでの話をまとめると、「確定申告をしなかったり、期限に遅れたりした場合、いいことは何もない」というのが事実でしょう。万が一、確定申告に間に合いそうにない場合は、一度税理士などの専門家に相談するのをおすすめします。