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2024/04

2024年4月1日から相続登記が義務化へ。経緯や罰則を知ろう

相続登記が行われない弊害が顕在化した

相続登記とは、亡くなった人=被相続人から土地を受け継いだ場合に、その土地の名義を受け継いだ人=相続人に変更する手続きのことです。相続人本人もしくは依頼を受けた司法書士が行いますが、実はこれまでは「死亡後〇ヵ月以内に行わなくてはいけない」という明確な決まりがありませんでした。極論すれば、遺族が何もしなければ、土地の名義は被相続人のままになっていたということです。手続きが面倒、固定資産税を払いたくないなど相続登記をしない理由はさまざまですが、このことは「所有者不明の土地が増える」という弊害につながりました。

国土交通省が平成28(2016)年に公表した「所有者不明土地の実態把握の状況について」によれば、調査委対象となった土地のうち「登記簿のみでは所在不明」とされたのは20.1%、「最終的に所在不明」とされたのは0.41%にのぼります。全体の約20%の土地が「持ち主がわからない」状態に陥っているということです。

持ち主がわからない以上、勝手に処分するわけにもいかないうえに、管理されずに放置され、周辺の環境や治安の悪化を招くなど、さまざまな問題が生じていました。

タイムリミットは3年以内

相続登記を義務化しなかったことによる弊害が顕在化したことで、国も相続登記の義務化に動きました。2024年4月1日に改正不動産登記法が施行されるため、「相続の開始および所有権を取得したと知った日から3年以内」に相続登記を済ませる必要があります。遺産分割協議の結果として不動産を取得した場合は、遺産分割された日から3年以内が期限です。

なお、正当な理由がないのに期限以内に相続登記を行わなかった場合、10万円以下の過料が求められるおそれがあります。加えて、不動産の所有者の住所・氏名に変更があった場合にも、2年以内の変更手続きが必要です。「法的な所有者は誰で、どこに住んでいるのか」を明らかにするのがこの改正の趣旨でもある以上、しかるべき改正といえるでしょう。

注意したいのは、法改正後に相続した土地だけでなく、改正前に相続した土地でも、相続登記の義務化の効果が及ぶことです。つまり、相続登記が完了していないなら、改正法の施行日から3年以内に相続登記をしなくてはいけません。

相続登記の手続きは、相続する不動産を管轄している法務局に申請します。自分が相続した不動産に関しての手続きなら、司法書士や弁護士などの資格がなくても行うことが可能です。ただし、慣れないと難しい部分もあるうえに、不動産の権利関係が複雑になっていることもあるので「もう無理」と感じたら、専門家に相談しましょう。

2024/03

インボイス開始で経理業務はどう変わる?

自社が「請求する側」ならさほど負担はない

2023年10月からインボイス制度が開始されました。簡単にいうと仕入税額控除を受けるためには、取引先が発行した適格請求書が必要になる制度です。そして、適格請求書を発行できるのは「適格請求書発行事業者」に限られます。これを踏まえて、経理業務に及ぼす影響を考えてみましょう。

まず、自社が「請求する側」であれば、適格請求書発行事業者としての登録を済ませ、請求書をインボイス制度における要件を満たすものにすれば問題ありません。ただし、端数処理のルールが「1つの適格請求書につき、税率ごとに1回ずつ端数処理を行う」ように変更されたので、その点には注意しましょう。

やや大変なのは自社が「支払う側」だった場合です。適格請求書発行事業者ではない取引先とやり取りをしている場合は業務が増える可能性があるため特に注意しましょう。


自社が「支払う側」だった場合にやるべきことは?

自社が「支払う側」だった場合、経理業務として行うことがやや複雑になります

まず、取引先から請求書などの証憑が届いたら、適格請求書かそうでないかを判別しなくてはいけません。適格請求書であれば「登録番号」「税率ごとの消費税額が書いてあるので、目印にしましょう。ただし、可能性としては低いですが、適格請求書発行事業者としての登録を受けていない取引先が不正に適格請求書を発行している可能性もあります。国税庁の「適格請求書発行事業者公表サイト」で調べましょう。

適格請求書をより分けたら、書いてある内容をチェックしなくてはいけません。消費税額が正しいか、「仕入税額控除対象の課税仕入10%」「(控除対象外の)課税仕入10%」「仕入税額控除対象の課税仕入8%」「(控除対象外の)課税仕入8%」という税区分になっているかを調べる必要があります。

また、取引によっても適格請求書の補完がいる取引とそうでない取引があるため注意が必要です。たとえば、公共交通機関の運賃や自動販売機からの購入、従業員に⽀給する出張旅費・宿泊費・⽇当・通勤⼿当や、税込1万円未満の課税仕⼊などは、一定の事項を記載した帳簿があれば仕入税額控除が受けられます。

最後に、一定の事項が記載された適格請求書を保存できるだけのスペースを確保しなくてはいけません。特に、PDFなどの電子データで受け取った場合、そのまま保管する必要があるため、サーバ内に専用フォルダを作るなどの対応が求められます。

いずれにしても、自社の対応状況を見直し、問題があると判断されたら税理士に相談し、改善を試みましょう。

2024/02

副業の出費、どこまで経費として落とせる?期限に遅れるとどうなるの?

「その事業に必要か」がカギになる

これまで、会社員は副業が禁止されているのが一般的でしたが、平成30年にモデル就業規則が改正され、副業・兼業に関する規制が緩和されました。そのため「会社員の傍ら、副業をしている」という人も珍しくありません。

副業をしている場合、所得税の確定申告を行い、納税をする必要があります。つまり、1年間の収益から費用を差し引き、求めた利益=所得に税率をかけ、所得税を計算し、その金額を納めなくてはいけません。ここでどこまでを費用=経費として計上して良いかが問題になります。

重要な考え方のひとつが「その事業において収益を獲得するために必要と判断されるか」です。例えば、旅行ひとつとっても、個人的な楽しみのために行くなら経費にはなりませんが、旅行に関するWebサイトの作成を副業にしている場合は立派な取材になります。取材である以上、かかった経費を費用として計上する余地はあるはずです。

このように、同じような出費でも、経費として計上できるかは副業の性質によっても異なります。判断が難しい場合は、税理士や税務署に相談したうえで扱いを決めましょう。

期限に遅れると何かと面倒なので要注意

本来、会社勤めをしている場合は、確定申告をする必要はありません。勤務先が年末調整をしてくれるためです。しかし、副業をしている人は、得られた利益=所得が20万円を超えるなら、自分で確定申告をしなくてはいけません。そして、所得税の確定申告は、毎年2月16日~3月15日(当日が休みの場合は休み明けの平日)までに行う必要があります。

仮に1日でも遅れてしまった場合、ペナルティとして無申告加算税および延滞税が課されるので要注意です。無申告加算税とは、期限までに申告書を出さなかったことによるペナルティとして課される税金を指します。自分から「申告書出し忘れた」と気が付いて慌てて出した場合は、自主的な期限後申告と判断されるので、本来納付すべき金額に5%の割合を乗じて計算した額を払わなくてはいけません。

また、本来の納付期限を過ぎて納税することに対する利息です。クレジットカードの支払日に遅れた場合の遅延損害金をイメージするとわかりやすいでしょう。法定納期限の翌日から2ヶ月を経過する日までは原則として7.3%、納期限の翌日から2ヶ月を経過した日以後は14.6%とされています。いずれにしても重要なのは、気が付いた時点ですぐに動くことです。自分だけでは無理、という場合は税理士に相談しましょう。

2024/01

令和6年与党税制改正大綱が公表。中小企業の場合の賃上げ促進税制はどうなる?

■「えるぼし」「くるみん」がプラス要素に

2023年12月14日、令和6年度税制改正大綱が自民党の総務会にて了承されました。さまざまなトピックが盛り込まれていますが、その中の一つが賃上げです。同大綱では賃上げ・投資促進のための減税措置(主に税額控除)が複数盛り込まれています。

前提となる知識として、中小企業向け賃上げ促進税制がどんな制度かをおさらいしておきましょう。一言でいうと、中小企業者等が前年度より給与等を増加させた場合に、その増加額の一部を法人税(個人事業主の場合は所得税)から控除できる制度です。令和4年4月1日から令和6年3月31日までの期間内に開始する各事業年度においては、「雇用者給与等支給額が前年度と比べて1.5%以上増加」した場合に給与等の増加分に対して15%の控除が受けられました。

ここからさらに「雇用者給与等支給額が前年度と比べて2.5%以上増加」すれば15%、「教育訓練費の額が前年度と比べて10%以上増加」すれば10%控除率が上乗せされます。つまり、最大で40%の控除が受けられる仕組みです。

令和6年税制改正大綱ではこれらに加え、女性活躍推進法に基づく認定(えるぼし認定)や次世代育成支援対策推進法に基づく認定(くるみん認定)の取得により、さらに5%控除率が上乗せされます。子育てと仕事の両立支援や女性活躍の推進の取り組みを後押しするための制度です。

■繰越控除も導入。公的制度も利用して賃上げを目指そう

加えて、令和6年税制改正対応では、繰越控除制度の導入も盛り込まれました。前提として、赤字企業(欠損法人)である場合、法人税の支払い義務がないため税額控除の恩恵にもあずかれません。

このことが、赤字企業において賃上げ促進税制の導入が進まない一因になっていたことも踏まえ、当期に控除できなかった税額控除の額を、5年間にわたって繰り越せるようになります。つまり、赤字の当期に賃上げをし、税額控除の権利を得れば、翌期以降の黒字分を控除で相殺し、法人税の減税が可能です。

ここまでの内容にもあるように、賃上げをすることは税額を減らすことになるうえに、従業員の満足度を高めるという意味でも大変有意義です。しかし実際は「賃上げをしたいのはやまやまだけど、何をすれば良いかわからなくて」と悩む事業主の方も多いのではないでしょうか?業務改善助成金やキャリアアップ助成金、企業活力強化貸付など、中小企業が賃上げに利用できる公的な制度は複数あります。賃上げ促進税制の導入を見据えて環境整備に取り組みたい事業主の方は、税理士にまずはご相談してみてはいかがでしょうか。

※参考URL※

https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/zeisei/syotokukakudai/chinnagesokushin04gudebook.pdf

https://sr.platworks.jp/column/2536

https://www.ntt.com/bizon/d/00513.html