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2023/05
免税事業者の取引先に課税転換を求めるときは要注意。法律上問題となる3つのケース
免税事業者だと消費税相当額を買い手が負担することになる
2023年10月1日からインボイス制度(適格請求書等保存方式)が実施されます。
仮に、取引先の企業が免税事業者で、適格請求書発行事業者の登録をしていない場合は、その取引先からの課税仕入れに関し、仕入税額控除の適用を受けることはできません。
簡単にいうと「免税事業者からモノ・サービスを購入した場合、消費税相当額を買い手が負担する」ことになります。
このような事情があるため「できることから、取引先に課税事業者になってほしい」と思う事業主は決して少なくないはずです。
取引先と交渉をし、できる限りお互いにとってよい方向に向かうよう条件を合わせること自体は問題ありませんが、やり方次第では法律上問題となるので注意してください。
具体的なケースとして独占禁止法上問題になるケースと、下請法違反になるケースを紹介します。
独占禁止法、下請法問題にならないよう配慮を
まず、独占禁止法上問題になるケースの具体例は「課税転換に承諾しないと取引を打ち切ることをほのめかし、要請にあたっての価格交渉にも応じなかった」ことです。
課税事業者になることを要請すること自体は問題ありませんが、一方的な通告にならないよう、注意しなくてはいけません。
次に、下請法上問題になるケースの具体例を紹介します。
まず「取引完了後に取引先が免税事業者であると判明したため、請求書の額にかかわらず、消費税相当額の一部または全部を支払わなかった」ケースです。
これは、下請法第4条第1項第3号で禁止されている「下請代金の減額」にあたるため注意が必要です。
また「取引先が免税事業者から課税事業者になり価格交渉をしてきたものの、それに応じず一方的に単価を据え置くことにした」場合も、下請法第
4条第1項第5号で禁止されている「買いたたき」として問題になります。
ここで紹介したのは代表的なケースにとどまるので、実際に法律上問題になるかは、個々の事例を見て判断しないと断言できません。
免税事業者である取引先が多い場合は、どのように交渉を進めればトラブルにならないかを考える必要があります。
また、自社が免税事業者である場合も、不利な条件を提示された場合の対処法を知っておくとよいでしょう。
トラブルが起きそうな場合は、税理士や弁護士などの専門家と連携を取りつつ、どのように進めるか考えるのをおすすめします。
2023/04
インボイス制度は売上1,000万円以下なら3年間軽減措置を利用可能へ
売上1,000万円以下なら3年間軽減措置を利用可能へ
2023年10月から、適格請求書保存方式=インボイス制度がスタートします。簡単にいうと、適格請求書がないと仕入税額控除が適用されなくなる制度のことです。
そして、適格請求書は適格請求書発行事業者でないと発行できません。なお、適格請求書発行事業者になるためには、消費税の課税事業者である必要があります。
売上が1,000万円を超えているなら課税事業者になるため問題ありません。しかし、1,000万円以下の場合は課税事業者となり、適格請求書発行事業者として登録しなくてはいけません。このような背景があるため、これまで消費税の納税義務がなかった事業者でも、インボイス制度の開始により消費税を納めなくてはいけなくなることから、反発も相次いでいました。
そこで、令和5年度税制改正により導入されたのが、売上1,000万円以下の事業者に対する軽減措置です。
売り上げが1000万円以下の事業者が「課税事業者」になった場合、仕入などで払った消費税がいくらであろうと、売上にかかる消費税のうち、一律で2割だけ納めるという形になっています。
例えば、売上が900万円だった場合、売上にかかる消費税90万円のうち、20%にあたる18万円だけ納めればかまいません。
なお、この軽減措置は2023年10月の制度開始から3年間適用されるとのことです。
2023年4月以降もスムーズに登録可能に
インボイス制度がスタートすると、免税事業者であっても消費税を払わなくてはいけないため、登録を迷っていた事業者もいるはずです。制度開始のタイミングに合わせて登録を受けるためには、2023年3月31日まで申請書を提出しなくてはいけませんでした。2023年4月以降に申請書を提出する場合は「困難な事情」の記載が必須となっていましたが、この扱いも税制改正により緩和されています。
また、年間売上1億円以下の事業者の場合、仕入額が1万円未満であれば、インボイスは不要とする措置が2023年10月から6年間実施されることになりました。このように、免税事業者であっても、インボイス制度を見据えて課税事業者に移行しやすくする措置が取られています。
現在、免税事業者で、課税事業者への移行を迷っている場合は、前向きに検討しても良いでしょう。
実際に制度がスタートすると、会計ソフトのアップデートや社内体制の構築など、やるべきことがたくさん出てきます。
税理士などの専門家に相談し、疑問点を解消しながら進めましょう。
2023/03
【いまさら聞けない】ふるさと納税の手続きの流れと注意点をおさらい
ふるさと納税の基礎と手続きの流れ
ふるさと納税とは、都道府県や市区町村などの地方自治体に寄附ができる制度です。厳密にいうと、税金というよりは寄附金の一種と考えましょう。米や肉、魚などの食品やティッシュペーパーなどの生活雑貨、日本酒やワインなどの嗜好品が返礼品として受け取れることから、節約を心掛けている家庭でも人気があります。
なお、ふるさと納税の基本的な流れは以下の通りです。
1. 自身の控除限度額を調べる
2. 寄附する自治体と返礼品を決める
3. 寄附の申込をする
4. 自治体から返礼品と書類を受け取る
5. 税金控除の手続きをする
ここで問題になるのが税金控除の手続きをすることです。自営業やフリーランスなど、自身で確定申告を行う場合は、寄附金控除の適用を受ける前提になります。自治体から受け取った書類を使って確定申告書を作り、期限内に提出すればかまいません。
一方、会社員などの給与所得者で確定申告をする予定がない場合は、ワンストップ特例制度を使うと便利です。自治体に以下の3つの書類を添えて申請すれば利用できます。
● 寄附金税額控除に係る申告特例申請書
● 個人番号(マイナンバー)
● 寄附金控除申請をする本人の確認ができる書類
なお、寄附金税額控除に係る申告特例申請書はふるさと納税をする際に使用したポータルサイトから手続きをして送ってもらうことが可能です。
自分で総務省のWebサイトからダウンロードし、必要事項を記入して送っても構いません。
ふるさと納税の注意点とメリット
ふるさと納税は、さまざまな返礼品が受け取れるという点で人気を博していますが、注意すべき点がいくつかあります。
まず、ふるさと納税を使っても節税にはなりません。あくまでも、ふるさと納税は寄附金控除の一種であり、2,000円の自己負担を超えた寄附金額を所得税や住民税から控除する制度に過ぎないためです。
たとえば、3万円の寄附をし、自治体から返礼品を受け取ったとします。この場合、住民税・所得税から28,000円が控除されますが、これはあくまで「自分が住んでいる自治体に払うはずの税金を寄附先の自治体に払った」に過ぎません。支払うべき税金の総額が変わるわけではない点に注意が必要です。
また、すでに触れたとおり、確定申告やワンストップ特例制度を使わないと、寄附金控除は受けられません。手続きを忘れずに済ますのがポイントになります。
一方で、ふるさと納税にはメリットも数多くあります。やはり、好きな返礼品を受け取れることに魅力を感じ、ふるさと納税をする人は少なくありません。希少価値の高いワインや招待制のイベントなど、他では手に入らないものを返礼品にしている自治体もあり、人気を博しています。
また、自分の生まれ育った街など、ゆかりのある自治体を応援できるのも魅力です。なかなか現地には行けなくても、応援しているという気持ちを表現する手段としても使えます。
ただし、税務上扱いに注意が必要なのも事実なので、不明な点がある場合は、税理士などの専門家に聞きながら進めましょう。
2023/02
生前贈与加算が3年から7年に延長!令和5年度税制改正で何が変わる?
生前贈与加算について改めておさらい
2022年12月16日に、令和5年度税制改正大綱が発表されました。相続税や贈与税に関しても、さまざまな改正論点が提起されています。そこで今回は、特に押さえておくべき論点として、生前贈与加算の扱いの変更について掘り下げましょう。
生前贈与加算とは、亡くなる前3年以内に、亡くなった人(被相続人)から遺族(相続人)が贈与を受けていた場合、相続人の相続税課税価格に贈与額を加算する規定を指します。
なお、以下の財産については、たとえ被相続人が生前に贈与していたとしても、加算の対象にはなりません。
● 贈与税の配偶者控除の特例の適用を受けているまたは受けようとする財産のうち、その配偶者控除額に相当する金額
● 直系尊属から贈与を受けた住宅取得等資金のうち、非課税の適用を受けた金額
● 直系尊属から一括贈与を受けた教育資金のうち、非課税の適用を受けた金額
● 直系尊属から一括贈与を受けた結婚・子育て資金のうち、非課税の適用を受けた金額
そもそも、この規定は被相続人が生前に贈与をたくさん行い、相続税の負担を逃れようとするのを防ぐために設けられました。
「亡くなる前7年以内に」が生前贈与加算の対象へ
令和5年度税制改正大綱では、生前贈与加算の規定に関しても変更が加えられています。
すでに触れた通り、生前贈与加算は亡くなる前3年以内に贈与を受けた財産を対象にした規定でしたが、これが7年以内に延長されました。
なお、相続開始前4~7年の間に取得した財産については、当該財産の価額の合計額から100万円を控除できます。注意したいのは、1年間で100万円ではなく、4年間で100万円です。
控除できる額としてはあまり大きくないので、節税効果もあまり高くないことが予想されます。
また、今回紹介した生前贈与加算の期間延長が実際に適用されるのは2024(令和6)年1月1日以降の贈与からです。つまり、今後数年はいつ亡くなったかによって生前贈与の加算期間が異なる可能性が出てきます。
わかりやすくするために整理してみました。
● 2027(令和9)年:最長4年間加算
● 2028(令和10)年:最長5年間加算
● 2029(令和11)年:最長6年間加算
● 2030(令和12)年:最長7年間加算
● 2031(令和13)年:7年間加算
この改正により、相続財産が増えることになるため、これまで相続税が発生しなかったケースでも、今後は発生してくる可能性が出てきます。「自分たちは相続税を払わなくてはいけないのか」「払うとしたらどれぐらいになるのか」と言った疑問がある場合は、まずは税理士に相談しましょう。
2023/1
コロナと確定申告。独立した場合と保険金を受け取った場合の扱いは?
会社を辞めてフリーランスになった場合の税務上の扱いは?
新型コロナウイルス感染症の流行も3年目に突入しました。初期のような強力な行動制限はなくなってきているものの、まだまだ注意して暮らすに越したことはありません。その中で、生活に変化があった人も決して少なくはないでしょう。
ここでは「コロナで生活が変わった人」の例として、1)会社を辞めてフリーランスになった、2)新型コロナウイルス感染症に罹患し保険金を受け取った人の2パターンについて、税務上の扱いを確認します。
まず、会社を辞めてフリーランスになった人の場合、確定申告をどうするのかが問題になります。仮に、6月30日まで会社勤めをし、7月1日からはフリーランスとして仕事を始めた場合を考えてみましょう。
6月末までは給与所得を、7月以降は事業所得を得ていたことになるため、確定申告の際はこの2つを合算して所得税を計算しなくてはいけません。また、給与から源泉所得税が天引きされていれば、事業所得と合わせて計算した所得税から控除することが可能です。
たとえば、6月末までの給与から、源泉所得税が10万円差し引かれていたとしましょう。すべての所得を合算して計算した年間の所得税が20万円だった場合、確定申告の段階で納めるべき所得税は10万円となります。
なお、このパターンの場合、確定申告にあたっては源泉徴収票が必須です。紛失してしまった場合は、元勤務先に問い合わせて送ってもらいましょう。
新型コロナウイルス感染症に罹患し保険金を受け取った場合の税務上の扱いは?
新型コロナウイルス感染症に罹患し、加入している生命保険や医療保険から保険金や給付金を受け取った場合の税務上の扱いについても確認しておきましょう。結論からいうと、非課税所得となるため、税金はかかりません。「心身に加えられた損害または突発的な事故により資産に加えられた損害に基づいて取得する保険金、損害賠償金、慰謝料」として扱われるためです。
ただし、保険金や給付金の受取人が亡くなってしまい、相続人が代わりに受け取った場合は、相続税の対象になります。
また、医療費控除の計算方法についてもチェックしておきましょう。新型コロナウイルス感染症への罹患に伴いかかった医療費も、医療費控除の対象です。ただし、医療費控除の対象にできる医療費は「治療や療養のために自己負担した金額のみ」であるため、保険金や給付金を受け取った場合は、差し引かなくてはいけません。
ここで注意したいのが「補てんされる金額を差し引くのは、あくまでも給付の原因となった治療・療養のみ」というルールです。
分かりづらいので、例を用いて説明します。
【例】
新型コロナウイルス感染症でかかった医療費(抗原検査キットや解熱剤の代金も含む):3,000円
受け取った給付金:5万円
その他の医療費:15万円(※これらに伴い、保険金・給付金は受け取っていない)
この場合、新型コロナウイルス感染症にかかる医療費は0円になり、医療費控除にあたって自己負担した医療費の合計は15万円として扱われる仕組みです。
ここで紹介した税務上の扱いは、知ってしまえばさほど難しいものではありません。しかし、自分ではなかなか判断しづらいと感じた場合は、税理士などの専門家に確認しておくと安全です。